星がひとつほしいとの祈り

作者:原田マハ|実業之日本社文庫 文庫本裏書 売れっ子コピーライターの文香は、出張後に寄った道後温泉の宿でマッサージ師の老女と出会う。 盲目のその人は上品な言葉遣いで、戦時中の令嬢だった自らの悲恋、献身的な女中との交流を語り始め…(「星がひとつ…

ロスト・ケア

作者:葉真中顕|光文社文庫 冒頭、戦後犯罪史に残る大量殺人犯への死刑判決が描かれる。 登場人物たちは、それぞれの感想を持って聞く。 検事の大友は、高齢となった父を高級老人ホームに入居させる。 その際に運営会社「フォレスト」営業部長の佐久間と再…

ハードラック

作者:薬丸岳|講談社文庫 二十五歳にもなって日雇い仕事すら失い、さらに詐欺に会いなけなしの金を失った仁。 闇の世界の住人の森下に出会い、振り込め詐欺の出し子のような経験をする。 仁は現状から脱出するため、闇の掲示板で「大きなことをしようと」仲…

1970年の火刑

作者:海野謙四郎|宝島社文庫 文庫本裏書 「私、女の子を産んだの、華って名づけた」。 1970年の早春、仲間たちにそう告げた女子大生は、その直後、夜のゲレンデで炎に包まれて死んだ。 20年後、それぞれの人生を歩む仲間たちの前に、美しく成長した華が現…

風のマジム

作者:原田マハ|講談社文庫 文庫本裏書 伊波まじむは、通信会社琉球アイコムの派遣社員として働く28歳。 自分が何をすべきか判らず漠然と日々を送っていた。 彼女の運命を変えたのは社内ベンチャー募集の告知。 まじむは郷土沖縄のさとうきびでラム酒を造る…

ハーシュ 酷

作者:前川裕|新潮社 帯 東京吉祥寺に住む若夫婦が営みの最中に手斧で惨殺された。 犯人は逮捕され服役したが、18年後、今度は荻窪で新婚夫婦手斧殺人が発生。 血まみれの若妻は、高級ブライダルサロンのパンフレットを犬のように咥えていた。 ストーカーの…

狗賓童子の島

作者:飯島和一|小学館 大塩平八郎の乱に加担した豪農の息子の常太郎は、15歳になり、隠岐の島後に送られる。 常太郎の父、履三郎は義民として、島後でも尊敬の対象となっていた。 常太郎は大切に扱われ、島後で医師としての教育を受ける。 松江藩に重税を…

風の如く 吉田松陰編

作者:富樫倫太郎|講談社 父親の禄を減らされ、農業を手伝う武士の子の平九郎は白井小助という浪人に出会う。 平九郎の学問の情熱を知った小助は、兵学者で国禁を破った吉田寅次郎の元に連れていく。 そこには後の、久坂玄瑞や高杉晋作、伊藤博文、品川弥次…

Sの継承

作者:堂場舜一|中央公論社 1963年。東京オリンピック前に日本を憂う集団によるクーデターが企てられていた。 首謀者は大手企業の経営者で、大学生や政治家を手なずけ、毒ガスによる狼煙を上げようとした。 だが、実行寸前に首謀者が決行を中止し、仲間割れ…

でーれーガールズ

作者:原田マハ|祥伝社文庫 文庫本裏書 1980年、岡山。 佐々岡鮎子は東京から引っ越してきたばかり。 無理に「でーれー(すごい)」と方言を連発して同じクラスの武美に馬鹿にされていた。 ところが、恋人との恋愛を自ら描いた漫画を偶然、武美に読まれたこ…

64(ロクヨン)

作者:横山秀夫|文藝春秋 D県警の広報担当の三上は、記者クラブとの軋轢に悩まされていた。 さらに三上の娘は、家出をして行方が分からず、妻は気を病んでいた。 D県警は、昭和64年に起きた誘拐殺人事件は未解決のまま。 事件当時、三上は捜査を担当して…

逆流-越境捜査

作者:笹本稜平|双葉社 越境捜査シリーズの第4弾。 ハードボイルドな作家のコメディタッチの異色作だが、結構気に入っている。 警視庁捜査一課特命捜査二係の鷺沼は、冒頭で暴漢に刺される。 彼を救ったのは腐れ縁のコンビで、神奈川県警の刑事の宮野だった…

羅針

作者:楡周平|文春文庫 文庫本裏書 昭和37年。三等機関士の関本源蔵は妻子を陸地に残して北洋漁業に出立した。 航海の途中で大時化に襲われた源蔵は、戦時中にサイパンで別れた父親と、アメリカの潜水艦に撃沈された船に乗っていた幼い友のことを思いだした…

決戦!関ヶ原

作者:複数|講談社 収録作 「人を致して」|作者:伊東潤・・・・・・徳川家康 「笹を嚙ませよ」|作者:吉永永青・・・・可児才蔵 「有楽斎の城」|作者:天野純希・・・・・織田有楽斎 「無為秀家」|作者:上田秀人・・・・・・宇喜多秀家 「丸に十文字…

その女アレックス

作者:ピエール・ルメトール|文春文庫 「このミス」やいろんな賞で1位を取った話題作。 非常勤の看護師のアレックスは、見知らぬ男に拉致される。 「お前が死ぬのを見たい」と裸にされ、木箱に閉じ込められる。 アレックスが拉致された現場を目撃通報を受け…

アパリション

作者:前川裕|光文社 予備校講師で、ミステリー作家の矢崎には、同じく作家を目指す兄がいた。 兄は定職につくこともなく、小説を書き上げることもなく、姿を消してしまう。 矢崎の勤める予備校では、人気講師同士の諍いがあった。 そのころ都内では、旦那…

アトロシティー

作者:前川裕|光文社 大学の非常勤講師でジャーナリストの田島は、三鷹市で起きた母子餓死事件の記事を書く。 生活保護を受けずに、電気・ガス・水道も止められたのに、誰にも助けを求めず、気付かれずの孤独死だった。 田島の記事は反響を呼び、水道を止め…

闇の獄(上・下)

作者:富樫倫太郎|中公文庫 江戸時代、大坂で強盗の手引きをしていた新之助。 強盗の親方の女性を寝取ったことがばれ、押し入った商家で殺されそうになる。 刺され、大火傷を負った新之助は、女たらしの美貌を失い、絶望する。 身体が癒えれば、打ち首獄門…

歌舞伎町ダムド

作者:誉田哲也|中央公論社 「歌舞伎町セブン」の続編。 冒頭から、残酷な殺害シーンの描写があり、引き込まれる。 前作で結集した歌舞伎町を浄化する殺し屋集団の歌舞伎町セブンだが、彼らに対立するサイコパスが現れる。 彼は、怪しげな薬物を体に入れ、…

2014年 今年面白かった本。

今年は結構面白い小説が多かった。単行本 後妻業 村上海賊の娘(上・下) 怒り(上・下) 銀翼のイカロス ケモノの城 灰色の犬 蛍の森 今年最初に読んだ「蛍の森」はハンセン病患者の差別を描いた強烈な作品だった。 先日読んだ「後妻業」も孤独な老人をター…

彷徨う刑事 凍結都市TOKYO

作者:永瀬隼介|朝日文庫 文庫本裏書 満州から引き揚げ、刑事となった羽生誠一。 昭和23年1月、椎名町で発生した毒物を使った強盗事件に遭遇し、歴史の闇に葬り去られようとしている恐るべき事実に向かい始めるが・・・。 戦後最大の謎「帝銀事件」をモチー…

侠飯(おとこめし)

作者:福澤徹三|文春文庫 東京の文京区のFランク大学に通う若水良太は、就職先が決まらず、焦っていた。 友人の家からの帰り道、ヤクザの抗争の銃撃戦に巻き込まれる。 そのまま、当事者の組長の柳刃竜一が良太のマンションに居座ってしまう。 竜一は、料理…

死都日本

作者:石黒耀|講談社文庫 九州南部で破局的噴火が発生するパニック小説。 有史以前に九州の人がほとんど死亡し、縄文時代が終了したのと同じレベルの噴火が発生。 九州の南部の都市に、巨大な火砕流が襲う。一瞬にして都市が消滅する。 工学部の教授の黒木…

後妻業

作者:黒川博行|文藝春秋 68歳の小夜子は、結婚相談所長の柏木とタッグを組み、独居老人の遺産をかすめ取っていた。 柏木が財産を持っていそうな老人を探し、小夜子がターゲットに接近する。 内縁の妻となり、老人が死ぬ前に、公正証書の遺言状を都合のいい…

東京ビレッジ

作者:明野照葉|光文社文庫 文庫本裏書 松倉明里は玩具メーカー勤務の33歳。 社内では大リストラの噂が飛び交い、交際7年になる恋人との将来も不透明だ。 そんなとき、青梅市にある実家でも厄介なできごとが。 正体不明の夫婦が入り込み、何か月も我が物顔…

わたしが殺した男

作者:永瀬隼介|中央公論新社 「三日間の相棒」の続編。 前作の埼玉の田舎で起きた殺人事件で、龍二は埼玉県警を退職する。 龍二は新宿の探偵、秀之進の相棒になるが、歌舞伎町のBARでバーテンをする羽目に。 そのころ、警察が闇社会に送り込んだスパイが人…

銀河に口笛

作者:朱川湊人|角川文庫 文庫本裏書 昭和40年代、太陽の歩みが今よりも遅くて、1日が十分に長かったあの頃。 小学3年生の僕らは「ウルトラマリン隊」を結成して、身の周りに起きる事件に挑んでいた。 ある日、僕らは空を走る奇妙な流れ星を目撃する。 UFO…

死命

作者:薬丸岳|文春文庫 株の取引で財産を築いた榊信一は、がんのため余命宣告を受ける。 彼は眠っていた殺人願望を実行することにした。 金があるので、捕まらないように細心の注意を払い、最初の殺人を犯す。 味を占めた信一は次の殺人のターゲットを探す…

12月の向日葵

作者:永瀬隼介|新潮社 東京西部の高校の柔道部で同期だった香坂と弓削。 中退した香坂は極道に、弓削は警察に進む。 平成元年、二人は駆け出しで、喘いでいた。 香坂はバブル紳士を殺害し、弓削は拳銃の摘発に四苦八苦していた。 香坂は弓削に手柄を与える…

村上海賊の娘(上・下)

作者:和田竜|新潮社 織田信長と本願寺の戦いに、毛利水軍が割り込んでくる話。 主人公はタイトル通り、村上元吉の娘の景。 安芸の一向宗信徒を、本願寺に送り届け、泉州地方の侍たちと交流を持つ。 泉州侍は、織田家に味方し、本願寺を攻める。 泉州侍はハ…