アトロシティー

作者:前川裕|光文社
大学の非常勤講師でジャーナリストの田島は、三鷹市で起きた母子餓死事件の記事を書く。
生活保護を受けずに、電気・ガス・水道も止められたのに、誰にも助けを求めず、気付かれずの孤独死だった。
田島の記事は反響を呼び、水道を止めた水道局には批判が寄せられた。
田島は離婚しており、都内のマンションで一人暮らしだった。
隣で暮らしている姉妹とは顔見知りだったが、ある日、浄水器の押し売りに助っ人として立ち会う。
続発する詐欺的な訪問販売と、それにリンクするかのような押込み強盗による惨殺事件。
田島は、訪問販売を装ったグループの調査を始める。
するとその主犯と思われる男は未成年のころに、関西でアベックを拉致し、リンチ殺人を犯していた。
田島は関西で関係者に取材をし、冷酷非情な人物であることを知る。
隣室の姉妹との関係で知り合った刑事と連携し、事件の真相に迫る。
ところが、田島の離婚した妻子の情報が犯人グループに漏れ、逆に脅迫されてしまう。


訪問販売による恐喝から、金が得られないことにより、殺人にエスカレート。
そんな暴力集団の描写が不気味で、裏切った仲間の手首を切り落とすシーンも恐怖に拍車をかける。
犯人グループを追い詰め、一件落着かと思われた。
だが、冒頭の三鷹の母子餓死事件の真相は意外なところで明らかになる。
ひねりが効いていて、最後までスリリング。
デビュー作の「クリーピー」も面白かったが、こちらはさらに面白かった。
嫌な気分を増殖させる手法が上手い。


アトロシティー

アトロシティー