羅針

作者:楡周平|文春文庫
文庫本裏書
昭和37年。三等機関士の関本源蔵は妻子を陸地に残して北洋漁業に出立した。
航海の途中で大時化に襲われた源蔵は、戦時中にサイパンで別れた父親と、アメリカの潜水艦に撃沈された船に乗っていた幼い友のことを思いだした。
生還は果たせるのか?
生きて働くことの意味を激しく問う「昭和の海の男」の物語。


戦時中に辛くも生き延びた源蔵は、母親の勧めもあり、船乗りとなる。
結婚をして、子供もでき、高度経済成長期を駆け抜けていく。
前半は、北洋漁業での事故処理の話。
間に息子との確執が描かれる。
水産業も斜陽となった昭和の末期に、源蔵は最後の航海として、捕鯨船に乗り込む。
同郷の投げやりな青年に息子の姿を投影し、彼に目をかける。
捕鯨に興味を示した青年は、能力を開花させる。
だが、源蔵と青年の乗り込んだ船はトラブルに巻き込まれ、座礁の危機にさらされる。


昭和を強く感じさせる大河小説で、面白かった。


羅針 (文春文庫)

羅針 (文春文庫)