彷徨う刑事 凍結都市TOKYO

作者:永瀬隼介|朝日文庫
文庫本裏書
満州から引き揚げ、刑事となった羽生誠一。
昭和23年1月、椎名町で発生した毒物を使った強盗事件に遭遇し、歴史の闇に葬り去られようとしている恐るべき事実に向かい始めるが・・・。
戦後最大の謎「帝銀事件」をモチーフにした衝撃の警察小説。


この作品は2部で構成される。
前半は満州で倉田軍医中将が率いる関東軍防疫給水本部。
羽生は一等兵の歩哨として、ハルピンから送られてくる「実験材料」を搬入していた。
実験材料とは、中国人捕虜やスパイであり、本部に送られた材料は再び姿を見ることはなかった。
新聞記者の梶と知り合い、倉田中将たちが何をしているのかを知る。
また、関東軍特務機関の将校である片岡大尉からは、日本が負けると教えられる。
脱走した実験材料の処刑を命じられた梶は、躊躇いながらも撲殺してしまう。
敗戦が決まり、実験材料を皆殺しにした部隊と共に、汽車で逃れる。
その際、戦友の山下が、避難民の日本人を助けようとして、八路軍の捕虜となってしまう。


第2部は東京で刑事となった羽生は、元ゼロ戦パイロットの木山とコンビを組む。
椎名町で起きた毒物を使った大量殺人事件の捜査にあたる。
犯行の手口から、倉田中将の部隊の者への聞き取りを始める。
だが、犯人として捕まったのは、画家の平沢貞道だった。
納得のできない二人は捜査を継続するが、木山はGHQに家族を脅され、脱落。
羽生の前に、義手となり、ヒロポン中毒になった梶がやってきて、捜査の継続をそそのかされる。
さらに共産党シンパとなった山下、貿易商社の経営者となった片岡も姿を現す。
GHQにかくまわれている倉田に直談判に出かけるが・・・。


帝銀事件の真犯人は731部隊関係者であるという発想で描かれた作品。
第一部での中国人捕虜に対する残酷な描写。
敗戦を経て、劇的な変化をした梶、山下、片岡。
読みごたえのある面白い作品だった。


彷徨う刑事 凍結都市TOKYO (朝日文庫)

彷徨う刑事 凍結都市TOKYO (朝日文庫)