海賊と呼ばれた男(上・下)

作者:百田尚樹講談社
昭和20年8月15日、終戦の日
国岡鐵蔵は銀座にある石油会社の国岡商店に、疎開先から戻ってくる。
売る石油はなく、借金だけが残ったが、鐵蔵は一人の従業員も馘首にしないと宣言する。
ラジオの修理、旧海軍の残油集めなどをしながら、石油販売業者としての復活を期する。


鐵蔵は明治18年(1885年)に福岡で生まれた。
実家は比較的裕福で、福岡商業を卒業した鐵蔵は、神戸高商に進学する。
そこで日田重太郎という高等遊民に出会う。卒業前に東北に旅行し、石油に可能性を見つける。
卒業後、同級生たちが大手の会社に就職するのに対し、鐵蔵は従業員数名の浅井商店で勤め始める。
小麦を大八車にのせて、神戸の街を売り歩き、商売の仕方を覚えていく。
台湾での商いを成功させ、独立を考えていると、日田重太郎が援助を申し出る。
故郷で国岡商店を設立し、機械油の卸売を始めるが、すでに業者が入り込んでおり、売れない。
既得権益を打破するため、機械油を研究し、海の上で船の燃料を販売する。
商売を軌道に乗せた鐵蔵は、満州鉄道への油の納品にも成功し、会社の規模を大きくしていく。
戦争中も戦地が拡大するのと同時に、南方に製油所を作っていく。
鐵蔵は、日本の勝利を願いながら、国内の石油がほとんどない状況を憂えていた。


昭和22年、国岡商店は再び石油販売業務を開始する。
国内の同業他社は、多くが外資の資本が入っており、民族系の国岡商店は様々な妨害を受ける。
鐵蔵は従業員を鼓舞しつつ、製油所やタンカーを購入し、外資に対抗する。
一方、大戦後に独立をしたイランはイギリスに支配されていた油田を取り戻したが、経済的に孤立していた。
石油業界を牛耳るメジャーは、イランの石油をどこにも売らないよう、ホルムズ海峡を封鎖した。
イランから極秘に石油を買うことを持ちかけられた鐵蔵は、密かにタンカー「日章丸」を派遣する。
イギリス海軍の封鎖をかいくぐり、日章丸は日本へイランの石油を持ち帰ろうとする。



出光をモデルにした経済小説で、スケールは巨大で、ストーリーは面白く、一気読みできる。
国岡鐵蔵という男の生きざま、それに共鳴する従業員たちの行動力は素晴らしい。
面白いだけでなく、勇気を与えてくれる作品。
「永遠の0」の主人公の宮部が数行だけ登場するにはご愛敬。



海賊とよばれた男 上

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海賊とよばれた男 下

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