東京バンドワゴン

作者:小路幸也集英社文庫
東京の下町で、明治時代から続く老舗の古本屋「東京バンドワゴン」が舞台。
主人の勘一は3代目の79歳だが、まだまだ元気で店番をしている。
先年、妻を亡くしているが、その妻が幽霊として話の語り手となっているのは斬新。
家族は今時8人という大家族で、個性的なメンバーがが揃っている。
60歳にして、長髪で金髪の我南人は、勘一の長男だが、伝説のロッカーとして、今でもライブを行う。
我南人には子供が3人いて、長女の藍子は画家で未婚の母である。
長男の紺は大学の講師をしていたが、現在は古本屋の手伝いをしており、元客室添乗員の妻がいる。
次男の青は母親が不明で、長身美男の旅行添乗員。女性とのトラブルを度々引き起こす。
賑やかな家族の下には、常連客がしばしば訪れ、トラブルを持ち込む。
話は春夏秋冬の4話で成り立っており、ミステリの雰囲気を残しつつ、基本はホームドラマだ。
江戸下町の人情話を現代に甦らせることに成功していると思う。
家族の絆の大切さと楽しさを十分に感じることができた。話も面白かった。
すでに第2弾の単行本も出ているし、書店には平積みになっているし、これは売れるだろうな。
でも自分はもう少し、毒がある方が好きだ。品行方正で、豊かな才能を持つ家族は少し鼻につく。

東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)

東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)