笑いの現場

作者:ラサール石井角川SSC新書
コント赤信号としてデビューする前の学生時代から現在までを振り返りつつ、お笑い界の流れを描いた作品。
この手の本は自分の話に偏りがちだが、客観的にかつ俯瞰的に全体論としてまとめているので非常に読みやすかった。
寄席ブームから制作された「花王名人劇場」、関西発の「ヤングOH!OH!」、そして「THE MANZAI」による漫才ブーム
一世を風靡した「俺たちひょうきん族」と漫才ブームの終焉から、とんねるずダウンタウンなどの新しい笑いの勃興。
そして、現在のM-1グランプリに至るまで、笑いの質がいかに変化してきたかということをわかりやすく述べている。
特に、M-1グランプリに関しては筆者が審査員をしていることもあり、選考理由などが書かれており、興味深い。
また、ブームの先頭に立った芸人が一過性のモノとして、消費されてしまった理由も生々しく評論している。
時代を振り返った後は、ビートたけし明石家さんま志村けんとんねるずダウンタウンに関する評論が続く。
それぞれ面白いが、特にビートたけし明石家さんまを「神の視点」と「下界の視点」という対比は鋭いと思う。
とんねるずはあまり好きではないが、彼らが売れた理由も納得できた。
筆者に関してはコメディアンとしては面白いと思わないが、改めて空気の読める賢い人だなと認識した。
短時間で30年間のお笑い界の流れを理解できる良書。