手紙

作者:東野圭吾|文春文庫
弟を進学させるため、兄は強盗殺人を犯してしまう。
残された弟は、差別と偏見に晒されながら、ひとりで生きていく。
獄中の兄は毎月のように手紙を送ってくるが、弟は疎ましく思うようになる。
バンド活動をしても、デヴュー直前に犯罪者の弟として切り捨てられる。
金持ちの女性と付き合うが、やはり犯罪者の弟ということで、別れざるを得なくなる。
通信制の大学を何とか卒業し、家電量販店に就職するが、店に泥棒が入ったことで、兄のことがばれてしまう。
絵に描いたような不幸のオンパレードだが、由実子という女性が弟を救う。
二人の間に子供が生まれるが、幸せな生活も束の間だった。
兄のことが近所の人に知られてしまい、子供が仲間はずれにされるようになる。
家族を守るため、弟は兄に縁を切るための手紙を書く。
ベタな展開だが、面白かった。それは弟を取り巻く人々の描き方がよかったからだ。
兄の最後の手紙の「私は手紙など書くべきではなかったのです」という言葉は哀しい。

手紙 (文春文庫)

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