独白するユニバーサル横メルカトル

作者:平山夢明|光文社
「怖い本」「東京伝説」で上質な怪談を提供している作者の一風変わった短編集。
「メルキオールの惨劇」もそうだったが、無国籍でSFのテイストがあふれている。
理不尽かつ絶望的なまでの暴力と苦痛が描かれるが、何故かコミカルだ。
すべての話に織り込まれる誰も知らないような知識の披露は、狂気に拍車をかけている。
8編の作品が収録されているが、地図が主人公の表題作は意表をつかれて面白い。
腐りかけの象のような異形の人物を世話する「Ωの聖餐」はグロテスクな描写に終始する。
「ニコチンと少年」と「無垢の祈り」は子供を題材にした残酷な話。
理不尽な罪を押し付けられる「オペラントの肖像」と「卵男」
「すさまじき熱帯」は映画「地獄の黙示録」をスプラッタで味付けしたような話。
最後の「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」は夢に逃げ場を持つ拷問師の話。
これはすごいの一言。冒頭の相棒の自殺シーンの凄惨さから、ひたすら苦痛を与える拷問の描写。
正気の人間にこの拷問を加えていれば、発禁になったのではと思うくらいの内容だ。
こんな話を書ける人は、なかなかいないと思う。

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル