血の弔旗

作者:藤田宣永|講談社
単行本オビ
1966年8月15日、根津謙治は目黒区碑文谷二丁目にトラックを止めた。
現金11億を奪うためだ。
戦後の混乱期に金貸しを始めて財を成した原島勇平の屋敷で根津は居合わせたクラブのママを射殺する。
カーラジオからはローリング・ストーンズの『黒くぬれ!』が流れていた。
14年の歳月が過ぎ、新たな事件が彼らの身の周りに次々と起こる。
「誰が何のために?」混乱と疑心暗鬼の中、根津は煩悶する。
袂を分かった男たちの軌跡が再び交差する時、戦中、戦後を生きた人間の業と事件の真相が明らかになる―。
昭和の時代と風俗を克明に描写した熱き犯罪小説。


戦中に長野の疎開先で出会った4人は、根津の計画で、11億円を奪取する。
その4年後、大阪万博の年に、奪取した金を分配し、根津は居酒屋のフランチャイズで成功する。
他の仲間も芸能プロダクションや旅行代理店、作家としてそれぞれ財を成していく・
ところが、4人の接点を示す証拠が見つかる。
疎開先から、太平洋戦争で出生した兵士への寄せ書きに4人の名前が残されていた。
皮肉なことに根津の妻は、その出征兵士の娘だった。
時効までのカウントダウンが始まる中、4人は再び行動を起こす。


単行本で600ページ近い大作だが、昭和30年代から50年間を描き、当時の世相も織り込んでいるので飽きさせない。
非常に面白い作品だった。



血の弔旗

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