ガラパゴス(上・下)

作者:相場英雄|小学館
単行本オビ
警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明のままとなっている死者のリストから殺人事件の痕跡を発見する。
不明者リスト902の男は、自殺に見せかけて都内竹の塚の団地で殺害されていた。
遺体が発見された現場を訪れた田川は、浴槽と受け皿のわすかな隙間から『新城 も』『780816』と書かれたメモを発見する。
竹の塚で田川が行った入念な聞き込みとメモから、不明者リスト902の男は沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文と判明した。
田川は、仲野の遺骨を届けるため、犯人逮捕の手掛かりを得るため、沖縄に飛ぶ。
仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた。
田川は仲野殺害の実行犯を追いながら、コスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。


非正規労働者の厳しい現実が、いくつも描かれる。
労働者を洗脳し、低賃金でこき使う居酒屋、これはワタミだろう。
液晶パネルの工場の閑散とした様子、これはシャープ。
それから、被害者が働いていたハイブリットカーの組み立て工場。
一度ドロップアウトすると、なかなか正社員になれない現状。
そこにつけ込む、人材派遣業。
読んでいてつらくなるが、丹念に調査を進める田川刑事が徐々に真相に近づいていくところはスリリング。
現代の社会問題の闇を残酷に抉り、日本産業のダメな点がいくつも提示される。
考えさせられ、非常に面白かった。


ガラパゴス 上 (上)

ガラパゴス 上 (上)