地の底のヤマ(上・下)

作者:西村健講談社文庫
大牟田の三池炭鉱を舞台にした大河小説。
昭和30年代の三池争議や、炭鉱の爆発事故を経て、昭和49年から第1部がスタート。
殉職した伝説の警察官を父親に持つ、主人公の猿渡鉄男が警官としてデビューする。
炭鉱の労組が新旧に分かれて対立している中、旧組合の幹部の死体が見つかる。
殺人事件と思われたが、目撃者は見つからず、捜査は難航する。
ペイペイの警官の鉄男だが、伝説の警官の息子として、関係者の口は軽くなる。
だが、意外なところから犯人が見つかる。


第2部は昭和56年。腕利き刑事になった鉄男は、かつて新旧労組を分断した裏金を追う。
地元と連携し、刑事として成長した鉄男だが、組織を守る警察に幻滅してしまう。
結婚したものの、不幸な事故で娘を失い、妻は正気を失くし、華族は崩壊する。
自暴自棄になった鉄男は、幼なじみの検察官に重要資料を渡し、左遷される。


第3部は昭和64年。三池炭鉱は凋落の一途をたどっていた。
鉄男は炭鉱から離れた田舎の交番で駐在員となっていた。
のどかな地で、住民と夜になると麻雀を囲む日々を送っていた。
ところが大牟田で起きた保険金殺人事件に首を突っ込み、再び事件の捜査に巻き込まれる。


第4部、定年間際になった鉄男は有明の密漁を取り締まる船に乗っている。
諦念に包まれつつ、伝説の警官であった父の死因を調べ、やがて真相にたどり着く。



一酸化炭素中毒で廃人となった労働者。強制労働で連れてこられた朝鮮人
ヤクザの抗争など、大牟田の炭鉱の負の部分を丁寧に描いている。
鉄男と幼なじみとのその後も劇的だ。売春の元締め、大蔵省の官僚、検事。
鉄男を取り巻く人物と、大牟田を描いた大河ドラマだ。


文庫本の上下巻で1400ページを超えるが、一気に読んだ。
面白かった。


地の底のヤマ(上) (講談社文庫)

地の底のヤマ(上) (講談社文庫)