落日の宴(上・下)

作者:吉村昭講談社文庫
幕末にロシアと日露和親条約を締結した幕臣川路聖謨を描いた作品。
プチャーチンの強硬な姿勢にも屈せずに、交渉を行う描写は丁寧に描かれている。
元々、軽輩の出身でありながら、勘定奉行の筆頭になるだけの能力があった。
蛮社の獄で、身近な友人が捕縛され、怯えながらも出世の階段を上っていく。
彼の活躍のクライマックスが、ロシアとの交渉で、作品の大部分が割かれている。
締結後は、老中の阿部から、大老井伊直弼に権力が移り、聖謨は冷遇される。
老年は、身内の不幸や、自身の中風など、不幸な生活を送り、江戸開城のころにピストル自殺。
開国は避けられず、幕府の存続も危うくなった時代に活躍した能吏の生涯を描いている。


流れるような展開で、作者の力量はさすがだ。
でも、ストーリーは地味で、結末が暗いので、この作者の作品にしてはイマイチ。