月の上の観覧車

作者:荻原浩新潮文庫
8つの作品が収録された短編集。
東京で家族との紆余曲折を重ね、故郷に帰る中年の旅路を描いた「トンネル鏡」
若い頃に海外でマジシャンとして活躍した祖父を観察する孫娘の「上海租界の魔術師」
定年退職する夫を迎える主婦が結婚から今までの料理にまつわる思い出を描いた「レシピ」
妻を亡くしてうつ状態になった夫が夜店に紛れ込む「金魚」
離婚した後、娘と会うときに現状を振り返る元夫の「チョコチップミントをダブルで」
ゴミ屋敷の老婆と役所の職員の交流を描く「ゴミ屋敷モノクローム
故郷を離れた中年男が、かつての恋人に思いを馳せる「胡瓜の馬」
ラストは表題作の「月の上の観覧車」で、老境の男性が過去を振り返る話。
それぞれの話に共通しているのは、「悔恨」なのかな。
ちょっと寂しい話ばかりで、テンションは低めだが、余韻は長引く。
悪くないけど、この作家は、長編の方が向いていると思う。

月の上の観覧車 (新潮文庫)

月の上の観覧車 (新潮文庫)