ハロワ！

作者：久保寺健彦｜集英社文庫
28歳の沢田は、民間の人材会社を退職し、ハローワーク宮台で嘱託として働き始めた。
就職相談員の沢田のもとには、癖のある人物が相談にやってくる。
68歳の元配管工の波多野は、経験もないのに事務職を希望するが、一向に職は見つからない。
元銀行員の斎藤は、前職のプライドが邪魔をして、あらゆる求人に難色をつける。
引きこもりの女性のひなたは依存症で、相談に乗っているうちに沢田は慕われるようになる。
就職セミナーの講師の女性を言い負かして泣かしたり、いい加減な生き方をしている柳下。
沢田は先輩の千堂や奈美の市道を受け、徐々にアドバイザーとしてのポジションを確立していく。
また、後半から離婚寸前の奈美と急速に接近し、恋愛小説の趣も出てくる。
ほんわかとした人情モノのようだが、結末で沢田は頭のおかしくなった求職者に襲われる。
このストーリー展開のギャップが作者の持ち味だ。
現実は残酷だが、それでも生きていかなければならない。
面白い作品だった。

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