ケモノの城

作者:誉田哲也双葉社
北九州監禁虐殺事件をベースにしたミステリ。
虐待された女子高生が、保護を求め、警察に駆け込んできた。
足の爪ははがされ、あちこちにやけどをしていた。
警察は保護した女子高生の摩耶の証言をもとに、監禁されていたと思われるマンションに踏み込む。
そこにはアツコと名乗る女性がいたが、彼女も明らかに拷問を受けた跡があった。
梅木ヨシオと名乗る男が、アツコと摩耶を監禁していたとのこと。
だが、マンションを調べると、異なる血液のルミノール反応が見つかる。
やがて、アツコから梅木の極悪非道な振る舞いが明らかになる。
摩耶の父親、アツコの家族をコントロール下に置き、互いに監視させる。
自分は手を汚さずに、部屋の中にいるメンバーに序列をつけ、拷問を奨励する。


ここまでは、北九州の事件の焼き直しなのだが、ワンクッションを挟み、スリルあふれる作品となっている。
監禁事件のあった近くで、辰吾は板金工場に勤め、ファミレスでバイトする聖子とアパートで同棲していた。
そこに聖子の義父という三郎が転がり込んでくる。感情が読み取れない不気味な男だった。
三郎は働く気もなく、遠慮もなく、辰吾のアパートに寄生する。
感情の読み取れない気持ちの悪い男を、二人の部屋に住むことを許した聖子に戸惑う辰吾。
辰吾は出ていこうとしない三郎を密かに調べ始める。
ボストン鞄の中で見つけた容器に入った血液。
事件発覚の前に、摩耶とアツコの監禁されていたマンションをじっと眺める三郎。


辰吾と三郎が衝突するまでのスリルはいい。
辰吾が最後にマンションに踏み込むシーンは十分ホラーだけどちょっと物足りない。
結末に明らかになる監禁事件の真相は驚かされるが、監禁マンションの描写に大半が割かれている。
ただ、北九州の事件を知っていれば、電気ショックや姿勢を変えさせない拷問は既知のこと。


ちょっと前に闇金ウシジマくんでも読んだ。
松永太って、クリエーターの創造欲を掻き立てる犯罪者なのだろう。
だから、辰吾という第三者を設定した作者は上手い。



ケモノの城

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