蟻地獄(上・下)

作者:富樫倫太郎|中公文庫
江戸で薬の行商を営む甚八は、町娘のおるいに所帯を持ちたいと持ちかける。
だが、甚八は阿修羅の仁兵衛を頭目とする盗賊団の一味だった。
さらに、おるいは仁兵衛の娘で、先行きは明るくなかった。
仁兵衛は、大店の大和屋に1万両の金があることを察知し、最後の仕事に取り掛かる。
甚八はこの仕事が成功すれば、仁兵衛に正直に話し、足を洗おうと考えていた。
綿密な計画だったが、助っ人がへまをして、仁兵衛は重傷を負う。
大和屋の家族を皆殺しにするはずだったが、甚八は三歳の娘を逃がす。
さらに仁兵衛を助け、目明しの親子を殺傷し、無事に逃れた。
だが強奪した金の分け前で、助っ人と揉め事となり、仲間割れが発生する。
甚八は殺傷事件から生き残った目明しから下手人として捕らわれ、牢獄へ。
筆舌にしがたい拷問にかけられた甚八だが、仲間を売らず、自白はしない。
ところが、仁兵衛は仲間たちを次々に殺害し、強奪金を独り占めにしようとする。
甚八と共に仁兵衛の右腕だった雛次郎は、辛くも仁兵衛の罠から逃れる。


凄腕の甚八と雛次郎を切り離した仁兵衛だったが、二人を殺し損ね、狙われることになる。


悪党の暗躍を描いた暗い作品だが、面白かった。
特に雛次郎の出自の悲惨さを描いた下巻は読みごたえ十分。

蟻地獄〈上〉 (中公文庫)

蟻地獄〈上〉 (中公文庫)