賞の柩

作者:箒木蓬生|集英社文庫
イギリス医学界の重鎮、アーサー・ヒルノーベル賞を受賞した。
知らせを聞いた青年医師の津田は、若くして白血病で死亡した恩師の清原を思い出す。
清原はアーサーと同じ分野の研究をしており、生きていればノーベル賞の候補になったはずだ。
もう一人のライバルだったハンガリーの研究者も、白血病で亡くなっている。
清原の記録を探ると、ヒルの研究の発表の前に、同じ内容の論文を出したスペイン人がいた。
津田は、研究者の死の理由とスペイン人を探しに、ヨーロッパへ。
パリで絵の勉強を続けている清原の娘の紀子と合流する。
紀子に父との思い出を語ってもらい、死因にますます不審な点が浮かぶ。
スペイン人研究者のルイスは、ヒルに論文をにぎりつぶされ、アル中になり、精神病院に入院していた。
津田と紀子はルイスを訪ねるが、退院した後だった。


この作品は、90年発表の作品だが、放射性物質を凶器にしているところに慧眼を感じる。
ヒルが母から受けた深い愛情と、清原が娘に注いだ愛情がそれぞれ美しい。
感動作の多い作家だが、この作品に関しては普通のでき。


賞の柩 (集英社文庫)

賞の柩 (集英社文庫)