蜩ノ記

作者：葉室麟｜祥伝社文庫
第146回直木賞受賞作。
豊後羽根藩の檀野庄三郎は、不注意から城内で刃傷沙汰を引き起こしてしまう。
本来なら切腹のところ、家老からある条件を持ちかけられる。
それは、向山村に幽閉中の元奉行戸田秋谷の動向を探るというものだった。
秋谷は7年前、藩主の側室との密通の廉で、家譜編纂と10年後の切腹を命じられていた。
庄三郎は、監視と家譜編纂の補助のため、秋谷の自宅に居候することになった。
秋谷の人柄に触れるにつれ、庄三郎は無実だと思うようになる。
7年前の真相を明らかにすれば、秋谷は救われるのではと考え、調査を始める。
だが、そこには家中の権力闘争が隠されていた。

秋谷と庄三郎と村人たちのほのぼのとした交流が淡々と描かれる。
だが、そこに不正を働こうとする役人と商人がやってきて、殺人事件が発生する。
秋谷の息子は、友人を殺され、敵を討とうとする。

ストーリー、人物造形が素晴らしく、直木賞受賞作というのも頷ける。
時代小説で感動できるものは珍しい。非常に面白かった。

蜩ノ記 (祥伝社文庫)