貌孕み

作者:坂東眞砂子|文春文庫
国学者平田篤胤の下に、幼い頃に天狗にさらわれ、仙境で過ごしてきた嘉津間が現れる。
少年だった嘉津間は、美青年に成長し、篤胤の屋敷に滞在することになる。
そこで、嘉津間が異郷で見た話を篤胤の家族に語る短編集。


「太祖墓陵」は、過去の権力者の墓を偶然発見したことで、繁栄を得た発掘者と町の話。
この作品は、中国と思われる架空の街を描いていて、杜子春を彷彿させる。
それ以外の作品は、現代の日本を投影したシチュエーションが描かれる。
最終作は近未来の極端な格差社会となった日本に篤胤がタイムスリップしてしまう。
ありえないだろというより、ストーリーの面白さが勝った。
最近の作者の作品は、あまり面白いと思わなかったが、これは久々に面白かった。


貌孕み (文春文庫)

貌孕み (文春文庫)