嫌な女

作者:桂望実光文社文庫
子供のころから周りに可愛がられ、成長してからは男を手玉に取る夏子。
従妹の徹子は、夏子を意識しつつも、勉強に励み、弁護士になった。
徹子の最初の案件は、夏子が農家の長男との婚約に関するトラブルだった。
その五年後、夏子は名古屋で美容師との金の貸し借りでトラブルを起こす。
その四年後、夏子は弘前で老い先短い老人の財産を奪ったとして、息子に訴えられる。
その後も絵画取引や、旅館でのチップや、ペットの引き取りや、高齢者のお見合いパーティでトラブルを起こす。
冒頭、24歳だった徹子は結婚、離婚をしながら、夏子のトラブルに振り回される。
夏子の詐欺師としての才能にうんざりしつつも、頼られると調停に駆り出される。
最終章では、徹子は70歳を過ぎ、弁護士もリタイヤしている。


幼少のころの些細な衝突で、夏子を憎んでいるはずの徹子だが、夏子の依頼を断れない。
各章の始まりは、夏子に騙された男性の独白で始まり、徹子が調査に乗り出す光景が描かれる。
夏子のトラブルの内容はそれぞれ面白く、ストーリーに引き込まれる。
徹子自身も、できの悪い兄弟や、離婚問題で悩まされるところは読みごたえがある。
何より、夏子の視点での描写が一切排除されているところが斬新だ。
クライアントの証言と、徹子の調査で夏子の人格が表現される手法は面白い。


嫌な女 (光文社文庫)

嫌な女 (光文社文庫)