完盗オンサイト

作者:玖村まゆみ講談社文庫
フリークライマーのトオルは、彼女に振られ、傷心のまま海外から帰国する。
浅草で野宿していると、小さな寺の住職に声をかけられ、居候となる。
住職の岩城と、どこかから預けられた子供の斑鳩
岩城は寺の収入だけでは生計を立てられず、土建屋のバイトをしていた。
トオルも岩城と共に、建設現場で働くことにした。
トオルは休憩時間に建設現場で、クライミングの練習をしているところを元請の社員に見とがめられる。
岩城とトオルの下請けの会社は、契約を切られてしまう。
責任を感じたトオルに、元請の社長が依頼を持ちかける。
それは、皇居にある由緒正しい盆栽を盗み出してほしいというものだった。
報酬は1億円。犯罪者になることを恐れるトオルだが、借金を背負った元の彼女のために引き受ける。
一方で、岩城は斑鳩の母親を探していたが、サイコパスに邪魔をされる。


人物の描写はうまく、これからもおそらく良い作品を出すだろう。
ただ、これが江戸川乱歩賞受賞作だとすると、賞自体のクオリティも下がっていると思う。
トオルの人物造形は魅力的だし、ストーリーも悪くない。
だが、サイコパスの描写は不要なものに思えて仕方がなかった。