終わらざる夏(上・中・下)

作者:浅田次郎集英社文庫
1945年、敗色濃厚となった大本営は、終戦工作を密かに行い始めた。
英語に堪能な人物を徴兵し、前線に送り込み、終戦後の和平交渉に当たらせようとした。
東京の出版社で翻訳をしていた片岡は45歳という年齢にも関わらず、赤紙が送られてきた。
疎開している小学生の息子と、東京に留まる妻を残し、入営のために盛岡に向かう。
徴兵逃れの知恵をつけていた医師の菊池、日中戦争で大活躍し、除隊後、運転手をしている富永。
片岡ら3人は盛岡からさらに北に送られ、千島列島の最北端の占守島に送られる。
そこには関東軍の精鋭2万人と戦車部隊が無傷で残っていた。
戦車隊の老戦車長と、戦車学校上がりの少年兵。
缶詰工場で働く函館の女学校の生徒たち。
方面軍の参謀は、片岡に終戦工作の任務を伝えるために、占守島に赴くが、そこにやってきたのはソ連軍だった。
すでに降伏しているにも関わらず、ソ連は攻撃を加え、守備隊は反撃を開始する。


様々な人物の視点から、昭和20年の夏が描かれる。
絶望的な状況の中でも、希望を持ち、夢を忘れない人たち。
クライマックスとなる占守島の戦闘は、ソ連兵の視点から淡々と描写される。
長編だが、非常に読みごたえのある悲劇。感動した。


終わらざる夏 上 (集英社文庫)

終わらざる夏 上 (集英社文庫)