八月からの手紙

作者:堂場舜一|講談社文庫
昭和21年、戦後間もない東京で、職業野球の球団を立ち上げようとする動きがあった。
建設会社を経営する藤倉は、矢尾という日系二世のアンダースローのピッチャーを勧誘する。
戦前のごく短い期間に活躍した矢尾は、開戦直前にアメリカに戻っていた。
日本人に対する風当たりが強くなる中、ニグロリーグの興行に参加する。
そこで、スター選手のギブソンと対戦し、見事に打ち取り、手紙による交流をはじめる。
だが、開戦後、矢尾は自動車修理工場を経営する父親とともに、収容所に収監される。
荒んでいく日系人社会を励ますため、ギブソンはチームメイトを率いて、慰問に訪れる。
ところが、敵国民との接触は禁止され、ギブソンは収容所の外でホームランの飛距離を伝えようとする。
ギブソンの活躍で、日系人の収容所は落ち着きを取り戻す。


矢尾は監督を引き受けるにあたり、ギブソンを招へいすることを画策。
その直前、アメリカでは初の黒人メジャー選手が話題になっていた。
それは、ギブソンではなく、後輩のロビンソンだった。
ギブソンは失望すると同時に、体調を崩してしまう。
矢尾はそれを知らず、ギブソンと交渉するため、単身渡米する。


挫折、絶望と苦しみを経験したトップアスリート。
その経験を共有することができず、すれ違いになってしまうシーンは悲しい。
泣ける作品とまではいかないが、設定がおもしろかった。


八月からの手紙

八月からの手紙