曳かれ者

作者:小杉健治|竹書房文庫
この作品は、捜査する刑事自身に出生の謎があり、彼の謎にシンクロする殺人事件が発生する。
謎を丁寧に解き明かしていくストーリーで、読みごたえはある。

文庫本裏書
下谷中央署の中年刑事・矢尋文吉は、隅田川神社で大学教授の刺殺死体が際、偶然現場近くに居合わせる。
さらに同じころ、近隣でもう一つの殺人事件が発生。
二つの事件を追ううちに、千秋という芸者が容疑者として浮かぶ。
謎めいた千秋の素性を探るため、矢尋は彼女の出身地である富山県城端町へと向かう。
そこで、初めて来たはずなのに見覚えがあるという奇妙な感覚を抱き、亡き母に連れられて幼い頃にこの田舎町を訪れた記憶を甦らせる。
容疑者と矢尋、二人の生い立ちの謎が明かされ始めたとき、事件は新たな顔を見せる。


長唄の調子の共通点で、事件の謎に迫るところは面白かった。
負の感情と、悔恨による懺悔が対象的で、重厚さを際立たせている。
ただ、この作家にしてはイマイチな作品だった。


曳かれ者 (竹書房文庫)

曳かれ者 (竹書房文庫)