烈風のレクイエム

作者:熊谷達也|新潮社
昭和9年。函館で潜水夫の会社を経営する泊敬介は函館大火災に遭遇する。
火に追われ、避難をする途中、溺れかかった女性と子供を救出する。
火がおさまり、夜が明けると函館の街はほぼ全焼だった。
敬介は妻子と母親を探すが、母親の死体を確認し、妻は海で発見した。
娘の遺体は見つからなかった。死者は2千人以上という惨事だった。
敬介は救出した女性の静江と子供と所帯を持ち、仕事を再開する。
静江は秋田の資産家の娘だが、駆け落ちをしており、さらに連れていた子供は実子ではなかった。
それでも敬介は新しい家族と、会社を立て直していく。
時代は移り、太平洋戦争に突入。函館も終戦間際に空襲にあう。
敬介は機銃掃射を浴び、重傷を負う。
足が不自由になったが、終戦後に再び、サルベージの仕事を始める。
静江と一緒に救出した子供の伸一郎は予科練に行き、戻ってくるが、サルベージの仕事を拒否する。
伏龍・震洋という特攻部隊に配属され、同僚の悲惨な事故を目撃し、すっかり荒んでしまった。
伸一郎は進駐軍の物資横流しの仕事に手を染め、やがて、敬介のもとから姿を消してしまう。
月日は流れ、朝鮮戦争の特需で景気を回復したころ、伸一郎が婚約者をつれ、敬介のもとに現れる。
婚約者は敬介にも馴染み深い相手で、結婚のあいさつのために、静江も連れ、青函連絡船に乗り組む。
ここでもまた敬介は災難に巻き込まれる。洞爺丸沈没。


北海道で苦難の人生を送った男の大河ドラマで、面白かった。
ただ、人間関係の描き方については少しだけ、安易だと思った。
一気読みしたが、邂逅の森や氷結の森に比べると、少しスリルに欠ける。


烈風のレクイエム

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