中学んとき

作者:久保寺健彦|角川文庫
タイトル通り、中学生男子が主人公の短編集。
「純粋恋愛機械」は、憧れの女子に近づき、ライバルを排除してきたが、最後に打ちのめされる。
「逃げ出した夜」は、高校生の彼女と付き合い、とんがっている男子の性欲を赤裸々に綴る話。
「願いましては」は、そろばん塾に通う主人公の話で、唯一の純愛パターン。
「ハードボイルドなあいつ」は、気障な台詞を吐くクラスメイトに巻き込まれる話。
ナイーブで、独特の世界観を持つ若者を描いてきた作者だが、本作は現実の生々しさを描いている。
学校という狭い世界を飛び出したいともがきながらも、それほどの知恵もない。
これまでの作品に比べると、ファンタジーの要素はないが、今後の作品への布石を感じさせる。