罪と罰の果てに

作者:永瀬隼介|光文社文庫
千葉の田舎町に一人の浮浪者がやってきて、無人の番小屋に住みつき、古紙回収業の仕事を始める。
彼は「キリストさん」と呼ばれ、町の人に親しまれていた。
中学の野球部主将の幸太は、キリストさんと話をするようになり、その人柄にほれ込むようになった。
幸太は野球部をドロップアウトして不良になっていた東一を引き合わせる。
東一もキリストさんに共感し、キリストさんの畑を手伝うようになる。
幸太はさらに、クラスで孤立していた聖斗にキリストさんを紹介する。
ところが、聖斗はキリストさんに神の存在について論戦を挑み、金属バットで殴り殺してしまう。
死の間際に近くの老人に発見されたキリストさんは、架空の人物に襲われたと証言する。
それから5年後、聖斗は新宿歌舞伎町で、一流私大を卒業した醍醐と出会い、人材派遣の会社を興す。
聖斗には聖美という美しい妹がおり、彼女の望むことは何でもかなえてやろうと思っていた。
さらに8年後、聖斗と醍醐の会社は成功を収めていた。だが聖美は聖斗の束縛を嫌い、アフリカに旅立つ。
そこで紛争地帯の内戦の惨状を目の当たりにし、彼らを救うために日本でNPOを立ち上げる。
東一は中学卒業後、東京に出てきて、ヤクザの家で住み込みを始める。
親分は東一を極道にはせず、フロント企業の社員にして、そこで裏経済のノウハウをたたき込む。
東一は上手く立ち回り、ヤクザの金を運用するトレーダーとして、派手な生活を送っていた。
ある日東一は、顧客である宗教団体本部で、出資を求めに来た聖美に出会う。
次第に東一は聖美に惹かれていくが、聖美は異常に嫉妬深い兄の存在を恐れている。
東一が使っていたトレーダーの中窪が惨殺され、東一は警察の訪問を受ける。
そこには刑事となった幸太がいた。東一の顧客の宗教団体「幸希の会」を調べているという。
この団体の前身は「ルナファーム」という農業施設で、聖斗と聖美はここに預けられていた。
幸太は東一を聖斗に引き合わせるが、聖美を愛している東一には殺意を隠そうとしなかった。
その間に「幸希の会」は聖美を拉致しようとしていた。



中学生3人がたどった道と、聖美が見たチャドの内戦の悲惨さを丁寧に描いている。
聖斗と「幸希の会」の代表の大徳寺の狂気も面白く、読み応え十分だった。


罪と罰の果てに (光文社文庫)

罪と罰の果てに (光文社文庫)