モラトリアムな季節

作者:熊谷達也光文社文庫
和也の小学校時代を描いた「七夕しぐれ」の続編となる作品。
中学・高校と仙台を離れていた和也は、浪人が決まり、仙台の予備校に通うため下宿する。
小学校時代に過ごした長屋を訪れるが、新しいアパートが出来ており、住民たちは入れ替わっていた。
親友だったユキヒロ、初恋の相手の直美、リタイヤしたヤクザの沼倉、ストリッパーの安子の姿はなかった。
予備校にはあまり通わず、ロック喫茶に入り浸りになる和也。
高校時代に付き合っていたカーコと再会し、再び交際を始める。
カーコの友人を見に、ライブハウスに行くと、そのメンバーに直美がいた。
長屋の住人の消息を尋ねると、沼倉は病死しており、ユキヒロと安子は東京に行ったとのこと。
美しくなった直美と、カーコの間で悩む和也。一浪目の受験は失敗する。
漠然と作家になりたいと思っていた和也は、受験勉強の合間に小説を書き始める。
二浪となった和也は、受験のため上京した東京で再開した安子と初体験。
ユキヒロとも再会し、東京に憧れる。
三浪目は、実家に引きこもり、ようやく大学に合格するが、本格的に小説家を目指すことを決意する。


自我と性欲に囚われた浪人時代を描いた自伝的小説。
直美、カーコ、安子、ユキヒロのその後を描いていない薄情さも、リアルだ。
七夕しぐれ」を読んでいないと、面白さは半減する。


モラトリアムな季節 (光文社文庫)

モラトリアムな季節 (光文社文庫)