呪い唄 長い腕?

作者:川崎草志|角川文庫
前作「長い腕」で横溝正史賞を受賞したのは2001年。長いブランクを経て続編が本作となる。
前作は面白かったように記憶しているが、読んだのは10年以上前だ。


ゲーム会社に勤めていた汐路は、前作の事件をきっかけに退職し、故郷の愛媛に戻った。
現在はフリーのプログラマーとして、生計を立てている。
汐路の生まれ育った村は閉鎖的な土地柄で、この村を支配している有力6家が存在していた。
前作でその一つが没落し、もう一家も当主が家屋を手放し、失踪状態となっていた。
汐路も有力6家の一員だったが、他の当主に比べると歳も若く、会合に呼ばれることもなかった。


汐路の村は江戸時代に神社の補修をする大工一家を、迫害して離散に追い込んでいた。
その大工の息子である敬次郎が、汐路の村に戻り、悪意のある仕掛けをして、有力6家に禍を与えていた。
ここまでは、前作の流れを継続している。


本作では、汐路の村で今も起きる怪異。
勝海舟幕臣として活躍する前の貧乏旗本のころのエピソード。
関東大震災に巻き込まれ、炎の中を逃げ惑う大工一家の絶望感あふれる話。
汐路の村に終戦末期に駐屯していた砲兵隊の隊員が失踪してしまうミステリ。
それぞれが独立した内容だが、話が進むにつれ、関係性が明らかになる。


そこそこ面白いが、現代の事件の推理はお粗末。
10年経って出版するレベルではない。