もぐら

作者:矢月秀作|中公文庫
影野竜司は、警視庁の組織犯罪対策部に所属していたが、麻薬取締の潜入捜査に失敗。
相棒を殺され、妻子も殺害される。怒りに駆られた竜司は組織に殴り込みをかける。
組長の首をはねた竜司は逮捕され、7年間投獄された。
出所した竜司は新宿に事務所を構え、街のトラブルを密かに解決する仕事を始めた。
ヤクザを目の敵にする竜司は、ヤクザから「もぐら」と異名をつけられ、恐れられていた。


竜司は、名門女子高に通う生徒の兄から、妹がシャブ漬けにされて監禁されているという相談を受ける。
この女子高では同じような事件が起きており、行方不明となった渋谷を調査する竜司。
街を仕切っているヤクザ、中国人、イラン人以外に、大学生のサークルのような組織が勢力を拡大していた。
若者のグループは狡猾で、ヤクザ、中国人、イラン人を互いに抗争に巻き込むように仕向ける。
さらに竜司に対しては、自分たちは被害者だとアピールし、ヘルプを求める。
直後に渋谷の勢力の動きがおかしいと気づいた竜司だが、若者グループは地下に潜伏する。
竜司の情報源の街のチンピラが拷問の末、殺害され、竜司は陰謀を嗅ぎ付ける。
警察に情報を流しつつ、竜司は単独で若者グループを追う。


警察をドロップアウトした孤独なアウトローを描いたハードボイルド。
竜司のスーパーヒーローぶりと、ありがちな展開。
ストーリーに意外さはないけど、これは面白いと思った。
ドロップアウトした元刑事には、多くの小説では警察からも嫌われている。
だが、この作品は竜司に対して同情的な同僚が多く、その関係がちょっと新鮮だ。


もぐら (中公文庫)

もぐら (中公文庫)