リビドヲ

作者:弐藤水流|光文社文庫
昭和30年代初頭、北関東の映画館で働く相馬司は、映画会社のプロデューサーにスカウトされる。
スター候補として上京したものの、実力は発揮できず、いつの間にか消えていく。
時代は移り、バブル時代の東京。
映画配給会社に勤務する杉山は、倉庫にあった相馬のフィルムを見た夜から、行方不明になる。
直後から、激しく遺体を損壊する猟奇的な殺人事件が連続して発生する。
相馬の妻の奈美江は、精神科医姉川は杉山の行方を探すが、一連の犯行は杉山の仕業ではないかと思う。


バブル期の殺人事件と並行して進むのが、相馬司の暗い内容の手記だ。
タイトルにあるように暗い性衝動に駆られる司は、「阿部定」を自分の最後の作品と思いこむ。
相手役と深い中になった司は映画を乗っ取ることを企画する。


司の手記で起きる事件とシンクロするかのように奈美江と姉川の前で、事件は続く。



この作家のデビュー作で、ホラー色の強いミステリー。
司の鬼気迫るパートの出来が良いだけに、パラドックスに逃げるのは納得がいかない。


リビドヲ (光文社文庫)

リビドヲ (光文社文庫)