ハング

作者:誉田哲也|中公文庫
この作品も警察が舞台だが、今までの作品と少し雰囲気が異なる。
冒頭、捜査一課の刑事たちの海での夏休みが描かれ、仲の良さを感じさせる。
休暇後、彼らは東京の赤坂で起きた迷宮入り事件に着手を命じられる。
雑居ビルの宝石店主が殺害され、防犯ビデオには、不審な人物が映っていた。
さらに、顔の爛れた男が、店主に近づいていたとの目撃証言。
この事件がなぜ、迷宮入りしたのか不思議なくらい、真相に迫った。
容疑者を捕まえ、犯行を自供させる。
ところが、捜査班は突然解散を命じられ、捜査員はバラバラになってしまう。
係長の堀田は高島平に飛ばされ、津原は杉並の防対課の刑事に、
他のメンバーの植草、小澤、大河内は地域の交番勤務を命じられる。
その直後に捕まえた犯人が、裁判で無罪を訴え始める。
「植草という刑事に自白を強要された」と。
翌日、植草は交番で首を吊った状態で発見される。
津原は、愛する人を守るため、警察をドロップアウトした小澤と行動を共にする。
だが、彼らの前には崩すことのできない権力の壁があった。


後半の津原と小澤の捨て鉢な行動、顔の爛れた「吊るし屋」と呼ばれる男の出現。
目と口の周りだけ無傷で、強力な薬品による拷問を受けた吊るし屋の過去の凄惨な描写。
各章の冒頭に挿入される悪党どもの会話もアクセントになっている。
津原というダークヒーローが生まれたが、次作はあるのかな?
今のところ、この作家は期待を裏切らない。


ハング (中公文庫)

ハング (中公文庫)