家鳴り

作者:篠田節子集英社文庫
SFとホラーのテイストのある7つの作品が収録された短編集。
「幻の食料危機」は脱サラでパン屋を経営する男の元に、都会で起きた大地震の被災者が殺到する話。
「やどかり」は、国家公務員の男が研修のために訪れた田舎で、保護対象の女子中学生に取り込まれる話。
「操作手」は、身内の老人介護に疲れ、新製品の介護ロボットを導入後の家族と被介護者の老人のギャップ。
「春の頼り」も介護老人の話で、寝たきりなのに今あった話を見てきたように話す老婆の話。
「家鳴り」は、失業した夫の代わりに、手芸で成功した妻がどんどん太っていく話。
水球」は高卒で証券会社に勤め、出世をしたものの、不倫で躓き、家族を失う話。
「青らむ空のうつろのなかに」は施設に預けられた自閉症の少年と家畜の豚の交流を描いている。
それぞれ異なる作風で、作者の引き出しの多さを感じる内容だった。
収録作の中では「幻の食料危機」と「青らむ空のうつろのなかに」がいい。
いずれもネガティブな結末なのだが、面白かった。


家鳴り (集英社文庫)

家鳴り (集英社文庫)