さよならの週末

作者:井伏洋介|幻冬舎文庫
帝都証券の東京神田事業所は、リストラのために閉鎖されることになった。
そこに勤める従業員は解雇されることが決定する。閉鎖の発表から従業員の週末を描いた作品。
所長の片桐は妻を癌で失ってから、人生の目標を失い、自殺場所を探す。
主人公の松尾は、呆然としつつも、派遣会社から来ているバツ一の夏美のことが気になっている。
派遣社員の牛山は、かつてのバンド仲間ともう一度音楽を再開しようとする。
派遣スタッフの麗子は、神田事業所で唯一解雇を免れた阿久津と不倫関係にあった。
同じく派遣スタッフの夏美は、離婚した夫から復縁の申し出があり、悩んでいた。
料理が得意な松尾、行動力のある牛山が、解雇される社員を巻き込み、新たなスタートを切るストーリー。


会社でもそれほど能力を発揮できない登場人物たちが、悩み、傷つくところは共感できる。
また、3日間の話にしては、ストーリーは濃厚だが、暗くはなく、前向きなところはいい。
ファンタジーの雰囲気もあるが、現実的でもある。
逆境に陥っても、少し手を伸ばせばつかめそうな希望を描いていて、面白かった。


さよならの週末 (幻冬舎文庫)

さよならの週末 (幻冬舎文庫)