ひまわり事件

作者:荻原浩|文春文庫
地方の市会議員が経営する幼稚園と、隣接する老人介護施設
議員は次の選挙対策として、老人と幼児の交流施設に改造することを決める。
急遽の決定に、働く職員も入居する老人も、園児も戸惑う。
老人施設の入居者の誠次は、妻に先立たれて入居していて、面白くない日々を送っていた。
そこに幼稚園児との交流ということで、隣接した壁を壊され、辟易していた。
ひょんなことから4人の園児と知り合い、ひまわりを植えることで、仲良くなっていく。
警戒心の強い4人にマージャンを教えるなど、不良老人ぶりを発揮する誠次。
同じ入居者の片岡さんは、誠次より10歳ほど年下だったが、施設の不正に憤慨していた。
片岡さんの正義感に共感を覚えるが、同調できなかった誠次だが、施設の待遇のトラブルに巻き込まれていく。
一人で立ち上がる片岡さんとロックアウトに加わる誠次と4人の園児たち。


この話は核家族化が進む日本の社会で、老人と子供の断絶の描写から始まっているのが上手い。
最初、誠次は園児のことを疎ましく思い、園児たちは誠次のことを妖怪のように思っている。
そこから段々と交流を深めていくが、世代が離れているからわかりあえることはない。
騒動のあと、本編は終了となるが、大人になった園児たちが誠次のことを偲ぶところは良い結末だった。



ひまわり事件 (文春文庫)

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