インビジブルレイン

作者:誉田哲也光文社文庫
女警部補姫川玲子シリーズの4作目。
チンピラの惨殺事件が発生し、所轄へのヘルプに赴く姫川班。
当初は抗争とみられ、暴対課のヘルプのような形で捜査に加わる。
ところが、「犯人は柳井健斗だ」というタレこみの電話が入り、玲子は単独で潜入捜査をする。
殺されたチンピラと柳井には、過去の殺人事件で接点があった。
柳井の姉とチンピラは婚約しており、姉は父親に殺害されていた。
その際に警察の捜査に不手際があり、柳井の父は警官の拳銃で自殺していた。
姉を殺したのは父だということで決着をつけた警察には都合の悪いタレこみだった。
上層部は捜査の目処が立つまで、柳井には近づかないことを厳命する。
玲子は健斗を追ううちに、男気あふれるヤクザの牧田と知り合う。
最初はヤクザとは知らなかったが、素性が割れても牧田に惹かれていく玲子。
一方、柳井の父と姉による近親相姦が原因で、罪を犯すことになった健斗のモノローグが挿入される。
牧田は健斗を信頼できる情報屋として、組内の反乱をあぶり出そうとしていた。
柳井の行方を追う、玲子と牧田だが、さらにヤクザの幹部が殺され、拳銃からは健斗の指紋が見つかった。


このシリーズは主役の姫川玲子が超人ではなく、過去の傷を引きずり、それでも事件に真摯に向き合うのがいい。
等身大のキャラクターを象徴しているのは、ヤクザと知りつつ、好きになってしまうところだろう。
また、玲子を取り巻く刑事のキャラクターもいい。
ジウでは超人的な活躍をする女性キャラクターを描いたが、こっちの方が長続きするだろう。
ストーリーは面白いし、キャラクターの造型も成功している。


インビジブルレイン (光文社文庫)

インビジブルレイン (光文社文庫)