道絶えずば、また

作者:松井今朝子集英社文庫
江戸時代の歌舞伎小屋で起きた事件を取り上げたミステリー。
「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」に続く3作目。
女形の荻野沢之丞は、引退の舞台に道成寺の変化モノを選ぶが、奈落の底に転落し、舞台初日に変死する。
舞台の大道具を担当する甚兵衛が疑われるが、行方不明になり、首つり死体で発見される。
同心の薗部は、前回の事件と同様に調査を始める。
沢之丞の後継ぎと目される2人の息子の対照的な行動。
また、もう一人の大道具担当の怪しげな寺への出入りの目撃情報が寄せられる。
薗部がその寺に足を運ぶと、沢之丞の芸を引き継いでいると思われる次男の宇源次の姿を発見する。
一方、根っからの芸人と思われた宇源次は、父の死にショックを受け、その行動は迷走を極めていた。
考えた挙句、沢之丞と甚兵衛の死には、怪しげな寺にあると考えた宇源次は潜入を決意する。
寺社の堕落を描いた作品で、薗部は単なる傍観者で、宇源次の冒険譚となっている。
時代小説はここのところ多く出版されているが、この作家は、独特の雰囲気を持っている。
でも、これは今までの作品に比べると、そんなに面白くなかった。