百年法(上・下)

作者:山田宗樹角川書店
原爆を6発落とされ、壊滅した日本。敗戦後、アメリカの不老不死技術「HAVI」を導入する。
見た目は20代のまま、永遠の命を得たが、世代交代は進まず、社会格差が広がっていた。
そのため、国は「HAVI」の施術を受けたものは100年後に死ななければならないという法律を定めていた。
西暦2048年、その100年目となり、「生存制限法(百年法)」の施行が始まろうとしていた。
個人はIDで管理され、そのIDが無いと、買物も移動もできない。
「生存制限法」により死を強制される人は、IDをはく奪され、国家が運営する安楽死の施設に送られる。
政府はこの決定を国民投票にゆだねることになった。


作者初のSF小説で、設定が上手くできている。
見た目が変わらないため、子供が成人すると、家族を解消する「ファミリー・リセット」
エリートと「ユニオン」に所属する一般市民。大統領による独裁制
百年法に抗い、偽装IDを発行する組織と、社会から逃亡した人たちで形成される「拒否者ムラ」
何より、まだ生存が可能なのに、強制的に生をリセットさせる制度が強烈だ。

オビに「これ以上のものは書けません」と作者のメッセージ。
確かにこれは作者の最高傑作で、一気読みできる。
スリルに満ちた作品で、今のところ今年一番面白い小説。


百年法 上

百年法 上