残穢

作者:小野不由美|新潮社
実録ホラーというべきか、一風変わった作品。
知り合いのライターが入居したマンションの和室に人の気配がする。
調べてみると、その部屋ともう一つの部屋の入居者の入れ替わりが激しかった。
さらにその近くの団地にも、人が居つかない部屋があった。
帯を摺る音、赤ん坊の泣き声。不動産屋は過去に自殺などの事故はないという。
作者はライターと共にこの土地の過去を調査することにした。
すると、マンションを出てから自殺した青年がいたことをつきとめる。
その青年が自殺したアパートの大家から、青年の最期を聞く。
彼は赤ん坊の泣き声に悩まされていた。
このマンションが出来る前に、ゴミ屋敷があり、その家主も無惨な死を遂げていた。
さらに時代をさかのぼると、狂人を押し込めた座敷牢、嬰児殺し、狂刀などのエピソード。
もう、これだけでお腹いっぱいとなるくらいだが、作者の知り合いの平山夢明福澤徹三が出てくる。
この二人のホラー作家の登場で、さらに不気味なエピソードが重なっていく。
語ると怪が訪れるため、封印していた怪談などが披露され、贅沢な内容になっている。
ただ、あまりにもエピソードを詰め込み過ぎたため、少し散漫な印象。
悪くない内容なのだが、長編のホラーは難しい。


残穢

残穢