無縁社会

作者:NHKスペシャル取材班|文春文庫
2010年の夏から放送された特集を本にして、菊地寛賞を受賞した作品の文庫版。
現在、3万人以上の死者が、孤独死をして、遺骨の引き取り手もない。
高度成長期に、地方から都会に流入してきた人たち。
都会での営みが上手くいかず、帰る故郷も失ってしまい、無縁仏になる。
このような人たちの生前を調査し、その人生にフォーカスを当てる。
また、孤独死の予備軍ともいえる人たちの取材を通して、人間関係が希薄になっていることに疑問を投げかける。
現代は、確かな収入があれば、一人で生きていくことの出来る社会になっている。
コンビニやインターネットもあるので、不便を感じることはないだろう。
だが、歳をとり、仕事をリタイヤすると、そこに人とのつながりは残されていないだろう。
掲示板やツイッターでの書き込みは30代や40代の不安定な収入の人が多かったという。


震災以降に出てきた「絆」というフレーズは空しいものでしかない。
老後の不安を解消するために貯蓄に血道をあげる独身者が増えていくのは間違いない。
ここに登場する寂しい老人を未来の自分に投影するのは悪くない。
でも、その財産を奪おうとする詐欺者が、そんな人たちに近寄ってくるのは当然のことと考えるべきだ。
この先、独居老人を狙い撃ちにした詐欺まがいの事件は増えるだろうな。
身につまされる話だが、非常に面白かった。


無縁社会 (文春文庫)

無縁社会 (文春文庫)