いつか響く足音

作者:柴田よしき|新潮文庫
大学を出て、実家から会社に通うOLの絵美は、母を癌で亡くし、直後に父が自殺。
絵美はOLを辞め、キャバクラに勤めるようになる。
そこで、ブランド品を買いあさるようになり、あっというまに借金地獄に陥る。
高校の同級生で、同じくキャバクラに勤める朱美の住む団地に匿ってもらう。
この団地には、ちょっと訳有りの人たちが住んでいる。
朱美は両親の離婚後、高校を中退し、実家を飛び出し、バイト生活を送り、キャバ嬢になった。
20代後半になり、キャバクラで生計を立てていくのは難しい歳になった時、音信不通だった父と出会う。
そのまま、父の生活する団地で生活するようになる。
階下に住む里子は、夫を亡くし、息子夫婦とは疎遠になり、団地の住民に料理のおすそわけをしている。
同じく未亡人の静子は何度か結婚を繰り返し、そのたびに保険金を得ている。
猫の集会を狙うカメラマンの克也は、無職のように思われていたが、実は大手プロダクションの経営を引き継いでいる。
絵里と朱美の周りの住民の私生活を描いた連作集。
それぞれの住民の半生を手短にまとめているが、皆、結構ヘビーな生い立ちで、何人か身内を亡くしている。
そんな住民たちが、絵里の借金を何とかしようと話し合うのが最終話。
絵里は団地の住み心地の良さを感じつつ、自分の生活を立て直すため、団地を出ていく。



団地は高齢者の終の棲家というイメージがあるが、実際は所得の低い若年層も入居していると聞く。
そういう背景を考えると、何となくリアルな近未来のコミュニティを描いているのだろうな。
面白かった。


いつか響く足音 (新潮文庫)

いつか響く足音 (新潮文庫)