逃亡戦犯

作者:翔田寛講談社文庫
太平洋戦争下のアメリカ。日系2世のミヤタケは強制収容所から脱出するため、兵士に志願する。
終戦後、占領下の日本にやってきたミヤタケは、国内に逃げ込んだ戦犯の摘発に当たる。
捜査権を日本の警察に譲ることが決まった頃、新たな戦犯のリストを手にする。
そこには、開戦前に日本に帰国し、京都北部の捕虜収容所で通訳を勤めていた木島の名前があった。
日系2世のツラ汚しを何とか自らの手で逮捕したいと、ミヤタケは舞鶴に出張する。
そこで相棒となる初老の刑事の城戸に引きあわされる。
城戸はガダルカナルで息子を失っており、日系とはいえ、アメリカの調査に手を貸すのは嫌だった。
一方、木島は日本の大学に通っていたが、敵性国からやってきたということで、通訳となることを強いられた。
終戦の日、木島は収容所から逃亡する。アメリカから戦犯に問われるのは必至だった。
逃亡する際、銃で撃たれ、負傷したところを朝鮮人に救われる。
木島の不幸な成り行きを知った朝鮮人一家は、木島を逃すため、大阪の猪飼野のネットワークを頼る。
ミヤタケと城戸は途中で衝突しながらも、木島と朝鮮人一味を追い詰める。


戦後のどさくさの中、立場の違う日系アメリカ人たちを描いた作品で、結末に意外などんでん返しもある。
二つの祖国に翻弄される日系人二人の生い立ちを書いた時点で、面白くなるなと思った。
ミヤタケと城戸の捜査方法の違いによる衝突や、木島の立場に共感し、命をかける朝鮮人の心意気もいい。


逃亡戦犯 (講談社文庫)

逃亡戦犯 (講談社文庫)