プラチナデータ

作者:東野圭吾幻冬舎文庫
近未来の日本。国民の遺伝子情報から犯人を特定するシステムが導入され、検挙率は飛躍的に上昇。
警視庁の浅間警部補は、捜査にもの足りなさを感じていた。
そんな彼に極秘の呼び出しがかかる。このシステムの開発者が殺害されたという。
このシステムを実際に運用する科学者の神楽は、浅間と共に調査に乗り出す。
DNA鑑定に絶対の自信を持つ神楽は、浅間を軽くあしらい、現場に落ちていた毛髪をシステムに投入する。
ところが、システムが指し示した犯人は神楽本人だった。
神楽にはもう一人の人格のリュウが存在しており、神楽はリュウが犯罪に関与したのではと疑う。
浅間は神楽の不審な行動に気づくが、捜査から外され、直後に神楽は逃亡する。
神楽はシステムの不備を開発者から知らされており、その謎を調べるために開発者の故郷に向かう。
浅間は容疑者となった神楽と接した時間は少なかったが、刑事のカンとして神楽は犯人ではないと思う。
足を使う古典的な捜査をする浅間と、多重人格の存在に悩まされながら逃亡する神楽。
二人が接触する結末で、国家ぐるみの犯罪が明らかにされる。


国家による統制社会を描いた近未来のミステリで、プロットはよくできている。
最後にすかっとしないところが少し残念だが、この作家の作品の中ではかなり面白い。
ただ、直木賞を受賞した作品の「容疑者xの献身」もそうだが、文句なしという作品はない。
白夜行」などの大河ミステリも結末はあっけないし、この作家の持ち味なのかな。
余韻が残らないから、1回読めば「ああ、面白かった」で終わってしまう。
代表作は何だとなると、かなり意見がわかれるだろう。
ハズレのない作家だが、これもこの作家の持ち味だな。ちょっと残念だけど。


プラチナデータ (幻冬舎文庫)

プラチナデータ (幻冬舎文庫)