再生

作者:石田衣良|角川文庫
不況に直面している人たちをテーマにした短編集。
表題作の「再生」は妻を自殺で失った男が、妻の亡霊から呼びかけられる話。
「ガラスの目」は自閉症に生まれた息子から逃げ出し、妻子を見捨てた男の話。
「流れる」は同棲していた男にいきなり別れを切り出されささやかな復讐をする話。
「東京地理試験」は清掃車を定年退職で辞めた男が、タクシーの運転手を目指す話。
「ミツバチの羽音」はお客様コールセンターで働く契約社員の女性たちを描く。
「ツルバラの門」はADHDの障害を持った息子を幼稚園に入れるが、親子ともどもイジメにあう話。
「仕事始め」は就職氷河期の何とか就職した会社だったが、ストレスがたまり出勤出来なくなる男の話。
「四月の送別会」は先のない広告代理店に就職した新卒の男性が、転職を考える話。
「海に立つ人」は大きなプロジェクトを終えた独身男性が、沖縄の夜の海で訳有りの女性に出会う話。
「銀のデート」は若年性アルツハイマーにより、仕事を辞めざるを得なかった男性に寄りそう妻の話。
「火を熾す」は定年退職後にボランティアで公園の管理を行っている老人の話。
「出発」はフリーターの息子をバカにしていた男が、リストラの対象となってしまう話。


多くの作品が、今の時代に底辺にいる人たちを描いていて、リアルだ。
あまり幸せではない現状に、少しでも希望を見出そうとする登場人物たち。
話としてはそこそこで、この作家が本当に苦しんでる人を描くのはちょっと無理があるな。
今までの作品を考えると、底辺の人をキャッチアップするアンテナは持っていないように思う。
悪くないけど、この作家が書く小説ではない。短編だが、中途半端な分量もイマイチ。


再生 (角川文庫)

再生 (角川文庫)