未踏峰

作者:笹本稜平|祥伝社文庫
裕也は就職氷河期の就職活動を経て、小規模なソフトウェア会社に就職した。
劣悪な労働条件のもと、のし上がろうとがむしゃらに頑張った。
だが、体調に異変が生じ、向精神薬を処方してもらい、依存症になる。
職場ではがんばりを評価され、それなりの地位を確保するが、ちょっとした事件で、転落する。
裕也は職場を解雇され、その後は派遣を転々とし、生活の基盤さえ築けない生活を送っていた。
人生に絶望した裕也は、最後の賭けのつもりで、八ヶ岳の山荘の求人に応募する。
山荘の主人はパウロさんと呼ばれ、かつては登山家として名を馳せた存在だった。
山荘には、裕也以外に、二人の若者がいた。
サヤカは、調理師だが、発達障害をかかえていた。
慎司は、立派な体型をしているが、知的障害者だった。
二人の抱えてきた苦悩が、裕也よりは少し控えめに綴られる。
パウロさんは3人の若者を新たなステージに立たせるため、ヒマラヤの未踏峰への登山を進める。
4人の夢は、実現に向かいつつあったが、パウロさんが山荘の火事で死亡する。
その後、3人に送られてきたパウロさんの懺悔に満ちた遺書。
パウロさんの登山家としての活躍と、エゴによる成功体験による自己嫌悪が綴られていた。
残された3人は、パウロさんの教えを胸に、未踏峰にチャレンジする。


底辺にあえぐ若者たちが、山に目覚め、強くなっていくベタなストーリーだが、面白い。
この作家は面白い作品を書く力量に関しては相当なものがある。
ハズレがほとんどない稀有な作家だ。



未踏峰 (祥伝社文庫)

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