虚報

作者:堂場舜一|文春文庫
大学教授が主宰するサイトを見て、若者の自殺が連鎖発生する。
そのことを最初に報じたのは週刊誌で、大手新聞社の東日は遅れをとった。
大学教授の逮捕が近いという情報が流れ、東日の記者たちは焦っていた。
社会部のエース市川は、長野支社からやってきた若い記者の長妻とともに大学教授に接近する。
市川は警察官僚にもパイプがあり、遅れを取り戻すためのネタを仕入れようとしていた。
長妻は市川の冷たさに違和感を持ちながら、本社内部の力関係を目の当たりにする。
市川、長妻の取材をあざ笑うかのように、特ダネを連発するライバル社。
市川は長妻を使えない記者だと思い、長妻は市川のことを出世のためには下を切り捨てると思う。
新聞記者の正義感、倫理観ではなく、保身、虚栄心によるトラブルがリアルだ。
作者が元々新聞記者だけあって、社内のいざこざを上手く描いている。
大学教授による自殺サイトの幕引きも衝撃的な展開だ。
面白いが、後味はスッキリしない。


虚報 (文春文庫)

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