オイアウエ漂流記

作者:荻原浩新潮文庫
南太平洋の小島を出発した小型飛行機が悪天候に見舞われ、着水する。
乗客は日本人サラリーマン一行と新婚夫婦と、老人と孫、それと刺青をした外国人に犬。
救命ボートに乗り込んだ彼らは、無人島に漂着する。
すぐに救助が来ると思っていた彼らだが、空腹と渇水に襲われる。
救助が来るまで、生き延びるために、食料と水を探し始める。
ボンボンの副社長、部下に威張り散らす部長、戦争の記憶がフラッシュバックする元日本兵の老人。
下っ端のサラリーマン、新婚の妻、老人の孫の少年の視点で話は描かれる。
海で獲物を狙い、高い木にある果実を確保し、火を起こす。
非常に過酷なサバイバルの状況を詳細に描いていて、絶望感が半端ではない。
だが、ユーモラスな人間関係を織り込んでいるのはこの作家の真骨頂で、暗さはない。
威張るだけで役に立たないと思われた部長も、中盤で食料の蘊蓄を披露して、メンバーを励ます。
極限下に置かれていても、要らない人間はいないという作者のメッセージが伝わってくる。
登場人物がそれぞれキャラが立っており、ストーリーも抜群に面白い。
結末が唐突で、後日譚が無いのはあっけないが、ハッピーエンドということなのでまあいいか。


オイアウエ漂流記 (新潮文庫)

オイアウエ漂流記 (新潮文庫)