螻蛄(けら)

作者:黒川博行新潮文庫
大阪のイケイケの経済ヤクザの桑原と、堅気の建設コンサルタントの二宮の活躍を描くノワール
この作品は「疫病神」「国境」「暗礁」に続く4作目。
今回のテーマは宗教団体で、信者500万人を抱える「伝法宗」の後釜争いから始まる。
桑原は二宮を使い、「伝法宗」の宗法である絵巻物を騙し取るが、その直後から二人は狙われる。
宗教団体に雇われた刑事、東京のヤクザ。
桑原と二宮は東京に乗りこみ、謎の美女の古物商に会い、絵巻物を売りさばこうとたくらむ。
大阪、東京、小田原、名古屋と目まぐるしく舞台が移動するが、二宮はどこでも貧乏くじを引く。
前3作と同じように、桑原と二宮の関西弁による罵倒のやり取りは面白い。
本作は二宮も桑原も危機に陥り、負傷するが、めげない不屈さがいい。
今回相手となる宗教団体の連中も、一筋縄ではいかないタイプで、その造形は上手い。
大阪弁が苦手な人でも、このストーリーの面白さは触れてほしいと薦めたくなる作品。


螻蛄(けら)―シリーズ疫病神 (新潮文庫)

螻蛄(けら)―シリーズ疫病神 (新潮文庫)