For You

作者：五十嵐貴久｜祥伝社文庫
母親を早くに亡くし、叔母の冬子に育ててもらった朝美は映画雑誌の編集者。
冬子が40代の半ばで脳梗塞で死亡するところから話が始まる。
美貌の叔母は、アプローチしてくる男性も多かったが、未婚のまま亡くなった。
朝美は冬子のマンションで、遺品整理をしていると、彼女の高校時代の日記が見つかる。
80年代に静岡で高校生活を送った様子がいきいきと描かれる。
一方、朝美は韓国の映画スターとの取材の準備のため、ストレスの多い日々を送っていた。
冬子の青春と、朝美の現代の話が交互に進む。
ストーリー展開は上手い作家だから、この作品もすんなりと読める。
ただ、冬子の恋と、韓国スターの出自をシンクロさせるのは強引すぎたなと思う。
冬子の日記も大学生の描写で終わっていて、彼女の足跡は途切れている。
朝美と韓国スターの取材でハプニングがあるが、この時点でストーリー展開も読めた。
何となくだけど、作者に韓流ブームに沿った作品を書かせたのではと勘繰ってしまう。
悪くない作品だが、この作家の作品の中では駄作だ。

For You (祥伝社文庫)